損切りとは、投資による損失がこれ以上拡大しないように実施する行為のことです。どのようにタイミングを見分けることができるのか、また、実施することによって得られるメリットとデメリットについて解説します。損切り不要のケースについても紹介するので、ぜひ参考にしてください。
損切りとは損失を抑えること
損切り(そんぎり)とは、すでに損失が出ている状態において、損失拡大を抑えるために実施する行為のことです。
例えば、1株2,000円でA社の株式を100株購入したとしましょう。大規模な不正を行っていたことが判明し、株価が下落し始めたとします。
企業としての信用を回復するのに時間がかかりそうで、購入時より株価が上昇することはあまり期待できない場合には、利益を得るのではなく、少しでも損失を抑えることを前提に投資戦略を立てることができるでしょう。万が一、倒産ということになれば、株式の価値がなくなる恐れもあります。
このようなときは早めに売却し、損失が少しでも小さくなるようにするほうがよいでしょう。売却することで損失が生まれますが、タイミングを逸してさらに損失が大きくなるよりは良い方法と考えられます。
損切りばかりでは損切り貧乏に
損切りを早めに行うことで、損失を抑えることができます。しかし、損切りはあくまでも「損失を抑える」ための行為であり、利益を生み出す行為ではないので、損切りばかりしていると合計損失が多額になってしまう点に注意が必要です。
今は含み損(売却したら損失が出る状態)であっても、将来的には利益が出ると考えられる場合には、長期的に保有することも検討しましょう。
損切りラインとタイミングの決め方
どのタイミングで、あるいはどの価格で損切りをするかという点は、非常に重要な問題です。焦って早めに損切りをしてしまうと、相場が好転して利益を得る機会を失ってしまうことになるかもしれません。
反対に慎重に損切りタイミングをうかがっていると、下落が続き、より一層損失が大きくなる可能性もあります。
迷ったときは、次の4つのポイントに留意して、損切りのタイミングを決めていきましょう。
- 通常は5~10%の損失でライン設定
- 短期投資では0~1%の損失でライン設定
- 金額で損切りラインを設定する
- 期間を設定して損切りを実行する
通常は5~10%の損失でライン設定
最初に損切りラインを決めておくことで、損失が拡大しそうなときに迷わずに損切りを実行できるようになります。通常は5~10%の損失で損切りラインを設定することが一般的なので、前もって計算しておきましょう。
例えば1株1,000円で購入した株式であれば、株価が900~950円になったときは売却し、損失を確定させます。
ただし、株価の変動が激しく上昇する可能性も濃厚なときは、950円になったからといってすぐに売却してしまう必要はありません。しかし、明らかに右肩下がりに相場が動いているときには、950円を切ったらすぐに売却し、損失を抑えるようにしましょう。
短期投資では0~1%の損失でライン設定
1日のうちに購入・売却を行い利益を確定するデイトレードを実施する場合は、可能な限り損失を小さく抑えるためにも0~1%の損失で損切りラインを設定します。例えば1株1,000円で購入した場合なら、株価が990~1,000円になったときに損切りを実行することができるでしょう。
また、デイトレードでなくても3~5日程度の短期間で投資を終える場合にも、損切りラインは狭く設定します。大抵の証券会社では自動売買システムが活用できるので、損切りラインを0~1%程度に設定しておきましょう。
金額で損切りラインを設定する
割合ではなく金額で損切りラインを設定することもできます。
例えば1株2,000円で100株購入したとしましょう。5万円以上は損失を出したくないと考えているのであれば、1株=1,500円に損切りラインを設定し、5万円を超える損失が生じないように調整できます。
このようにどの程度まで損失を許容できるのか明確なときは、金額で損切りラインを設定すると分かりやすいでしょう。
期間を設定して損切りを実行する
投資期間がある程度決まっているというときは、期間を設定して損切りを実行することができます。
例えば今年の12月にまとまった出費があり、投資に使っている資金も現金化しておく必要があるとしましょう。このような場合では、所定の日までに損失が出ているか利益が出ているかに関わらず売却し、現金化する必要があります。
もちろん、あまりにも価格が下がってしまうと、現金化しても必要な金額を用意できない可能性があるでしょう。金額あるいは割合で損切りラインを設定した上で、期間による損切り(含み益が出ているときには利益確定)を実施します。
損切りを実施するメリットとデメリット
最初から損切りラインを設定しておくことで、より計画的な投資を実施することができます。投資を行うときは出口戦略を見据え、損切りラインをあらかじめ設定しておきましょう。
損切りを実施することで得られるメリットには、次の2点があります。
- 損失の拡大を防げる
- 投資資金を有効活用できる
しかし、メリットばかりではありません。次の2つのデメリットも想定されるので、慎重な損切りが必要となります。
- 価格上昇時に備えられない
- 長期保有ができなくなる
それぞれについて詳しく見ていきましょう。
メリット1.損失の拡大を防げる
損切りを実施することで、損失の拡大を防ぐことができます。1株=2,000円で100株購入した場合、株価が1,800円になったときに損切りするならば、売買手数料を除いて20,000円以上の損失は生じません。
下落相場が続いているのに「いつかは上昇に転じるかも」と思って長期にわたって保有すると、場合によっては巨額の損失につながる可能性があります。早めに見切りをつけるためにも、損切りは意義のある行為といえるでしょう。
メリット2.投資資金を有効活用できる
投資に活用できる資金には限りがあります。投資資金を有効に活用するためにも、損切りラインを決めて損切りを実行することは有意義といえるでしょう。
例えば、下落相場にあり、いつまで経っても好転しなさそうな金融商品に投資をしている場合を想定してみてください。早めに損切りをして上昇相場にある金融商品に資金を投入すれば、資金を有効活用し、利益につなげることができます。
デメリット1.価格上昇時に備えられない
金融商品の価格は複雑な動きをするため、予想することは困難です。現在は下落相場にあっても突然上昇に転じることや、一旦急落してから上昇し始めることも珍しくありません。
しかし、損切りをしてしまうと、このような下落から上昇に転じるケースに備えることが難しくなります。投資資金に余裕があり、ある程度長期にわたって保有できるときは、損切りラインを広く定めるなどの工夫ができるかもしれません。
デメリット2.長期保有ができなくなる
損切りラインを狭く設定すると、すぐに損切りが実施されてしまい、長期保有できなくなることもあります。
デイトレードなどの短期投資を行っている場合には問題はありませんが、長期的に資産を運用したいと考えている人や、配当金や株主優待を目当てに投資をしている人にとっては不都合になるかもしれません。どの程度の期間、投資を行うのかを考えてから、損切りラインを設定するようにしましょう。
損切りする前に知っておきたいこと
損失を抑え、慎重な投資を行うに当たって、損切りは不可欠な行為といえます。しかし、多少のリスクはあっても大きな利益を狙うときや、長期保有を目指している場合には、損切りラインを広く設定するなどの工夫が必要になるかもしれません。
ここからは損切りについて知っておきたいポイントを4つ紹介するので、ぜひ覚えて、損切りラインの設定や投資に活かしていきましょう。
短期投資を目指す人には損切りは不可欠
デイトレードなどの短期投資を行う人には、損切りは不可欠です。損切りを行うことで損失をできる限り抑え、次の投資に進むことができます。
損切りラインを元々の価格の0~1%減、あるいは具体的な金額で設定し、スムーズに次の投資に資金をまわせるようにしておきましょう。
余剰資金以外で投資をする人も損切り必須
将来的に使途が決まっている資金を使って投資をする場合、あるいは生活資金の一部を使って投資をする場合は、投資資金を極力減らさないように意識する必要があります。
損切りラインを狭く設定して、損失があまり生じないように工夫しておきましょう。
株主優待や配当金目当ての人には向かない
株主優待や配当金目当てで投資を行っている人には、損切りという行為は向きません。損切りを実施すると株主としての権利がなくなり、株主優待や配当金を受け取ることができなくなってしまいます。
とはいえ、あまりにも株価が下がる場合には、株主優待の内容がグレードダウンしたり配当金利回りが下がったりする可能性もあるでしょう。狭すぎない損切りラインを設定し、株価暴落に備えておくことも必要です。
損切り後の再購入はケースバイケースで
損切りをした後に価格が上昇することがあります。今後も継続的な価格上昇が見込まれるときは、再購入することもできるでしょう。
しかし、価格が上昇し始めても、必ずしも継続的に上昇するとは限りません。価格の変動や取り巻く情勢を分析し、再購入すべきか柔軟に判断していきましょう。
まとめ
損切りを行うことで損失を抑え、新たな投資の機会を増やすことができます。特に投資初心者は、損切りを実施して、リスクを抑えた投資を目指すことができるでしょう。
損切りは、損切りラインを定めることで計画的に実施しやすくなります。下落割合や価格、期間で損切りラインを設定し、計画的な投資に活かしていきましょう。