手仕舞いとは、万が一の不利益を回避するために決済をすることです。決済したときの価格によっては損失が生じることもありますが、決済しないで放置するよりも損失額を抑えられるだろうと判断されるときに実行します。具体的にはどのような状況で手仕舞いをするのか見ていきましょう。
手仕舞いとは損失回避のために決済すること
手仕舞いとは、大きな損失を回避するために決済を行うことを指す言葉です。例えば株式を保有しているとしましょう。株式の売買は株式市場が開いているときしか行えませんが、株価を左右する様々な要因は休場中も動いています。
休場中に大規模な災害が起こり、次回の開場と同時に株価が急落するという可能性もあるでしょう。また、外国市場で暴落が起こり、日本国内の関連企業株の暴落が引き起こされるという可能性もあります。このような急変に備えて、長期休場の前に保有する株式を手仕舞いしておくことができるでしょう。
信用取引では反対取引をすること
信用取引では、売却ではなく反対取引を行うことで手仕舞いをします。反対取引とは、買付注文のときは担保としている株券を売却すること、売付注文のときは担保としている売却代金で株券を買い戻すことです。
なお、信用取引とは、株式や資金を証券会社と貸し借りし、資金にレバレッジを掛けて取引する手法を指します。通常の株式投資であれば、株式を買うことから始めなくてはいけませんが、信用取引を利用すると売り注文から始められるので、これから株価が下がりそうな株式を用いて利益を得ることが可能です。
手仕舞いをすべき5つのシチュエーション
手仕舞いは損失のリスクを回避するために実行します。つまり、近い将来、損失を被るリスクが高いと判断されるときが、手仕舞いが必要になるシチュエーションです。具体的には、次の5つの状況で手仕舞いをすることが少なくありません。
- 金曜日
- 大型連休前
- 下落の予兆が表れたとき
- すでに下落が始まっているとき
- 相場をチェックすることが難しいとき
1.金曜日
土曜日と日曜日は株式市場が休場のため、万が一株価を左右するイベントなどが起こっても、保有する株式を決済することはできません。
土曜日に世界的規模の大恐慌が起こり、月曜日は売り注文が殺到してなかなか決済できないといった状況を回避するためにも、金曜日に保有する株式や投資信託の手仕舞いをすることがあります。そのため、金曜日は比較的株価が下がる傾向にあるといえるでしょう。
2.大型連休前
大型連休の間も市場が休場しているので、決済したいと思っても実行に移すことができません。連休が長引けば長引くほど、株価急変を招くトラブルが生じる確率は増えますから、万が一に備えるためにも、連休前に手仕舞いできるでしょう。
実際に連休前は手仕舞いする投資家が多く、株価が通常以上に下落することが少なくありません。
3.下落の予兆が表れたとき
下落は始まっていないけれども、何らかの予兆があったときは、早めに決済をして株式や投資信託などを手放しておくことができます。実際に下落が始まると、予想もしないようなスピードで価格が下がることもあるでしょう。
リスクを回避するためにも、関連する企業の株価が下がっているなどの下落の予兆に敏感に反応するように心がけます。
4.すでに下落が始まっているとき
すでに下落が始まっているときは、早めに手仕舞いをすることで、損失を最小限に抑えられることがあります。保有しているといつかは形勢が逆転し、利益を得られるようになるかもしれません。
しかし、いつまでも形勢が逆転せずに損失が拡大していくという可能性もあります。利益を得ることも大切ですが、それと同様に損失を抑えることも大切です。不安だと感じるときは早めに決済し、損失を抑えるようにしましょう。
5.相場をチェックすることが難しいとき
激務が続き、今後1週間ほどは相場をこまめにチェックすることが難しいということが分かっているときなどもあるでしょう。相場をチェックしない間に急激な変動が起こり、形勢逆転を見込めないほどに価格が暴落する可能性もないとはいえません。
万が一に備えるためにも、相場のチェックが難しい時は、早めに手仕舞いをしておくことも検討してみましょう。
手仕舞いのルールを定めておこう
金曜日になる度、あるいは長期連休が始まる度に手仕舞いをしていると、リスクは回避できても、長期的な投資が難しくなり、大きな利益を期待しにくくなることがあります。
細かく利益を確定しつつ資産を増やしていきたいという方には、こまめな手仕舞いは適していますが、状況によっては長期的投資を行いたいという方には不向きかもしれません。
リスクを回避しつつ、長期的な運用も行うために、各自で手仕舞いのルールを定めておきましょう。次の3つのルールを定めておくと、迷わずに手仕舞いできるようになります。
- 損切りラインを決めておく
- 利益確定の目安も決めておく
- 変動が激しそうなときは投資をしない
損切りラインを決めておく
損切り(そんぎり)とは、あえて損失が出るタイミングで決済を行うことです。損失は被りますが、損失額がこれ以上増えないというメリットがあります。
例えば保有している株式が下落し、今後も下落し続けると判断できるとしましょう。現時点で損切りをすれば、少しの損失は被りますが、翌日、あるいは1週間後に決済するよりは損失額を抑えられるかもしれません。早めに損切りをして、損失を少しでも抑えるようにします。
株式や投資信託などの金融商品を購入するときは、予め、「この価格まで下がったら損切りをする」という損切りラインを決めておきましょう。損切りラインを決めておくことで、下落局面での手仕舞いに迷いがなくなります。
利益確定の目安も決めておく
保有している株式の株価が上昇しているときは、できるだけ長く保有して利益を増やしたいと考えるのは自然なことです。しかし、いつ相場が逆転し、急激な勢いで株価下落が起こるかわかりません。万が一の事態に備えるためにも、利益を確定する目安を決めて、その価格に到達した時点での手仕舞いを検討してみましょう。
最大限の利益は得られませんが、納得できる十分な利益は得られるようになります。
変動が激しそうなときは投資をしない
価格変動が激しくなりそうなときは、損切りラインや利益確定の目安を決めていても思うようなタイミングで対応できなくなる可能性があります。変動が激しくなる前に手仕舞いをして、危険な動きが予想される金融商品とは手を切ることもできるでしょう。
また、変動が激しくなりそうなときに新たな投資を始めないことも、リスクを回避するためには必要なことです。
手仕舞いをしたとき・しなかったときのリスク
価格が激しく変動しそうなときや長期間取引ができないときは、手仕舞いをして、相場急変のリスクを回避することができるでしょう。また、下落の予兆が見えているときも早めの手仕舞いが有効です。
しかし、手仕舞いをすることによってリスクが生じることもあります。手仕舞いをするリスク、手仕舞いをしないリスクについて見ていきましょう。
【手仕舞いをするリスク1】利益減
これからどこまで上昇するか分からない上昇相場で手仕舞いをすると、手仕舞いをしなかったときと比べて利益が減る可能性があります。
もちろん、プロの投資家でも相場を性格に予測することはできないため、手仕舞いをするときには利益減になるのかどうかはわかりません。しかし、後日、手仕舞いをした株式や投資信託の価格が上昇しているのを知ったときは、「あのとき手仕舞いをしなければ良かった」と後悔することもあるでしょう。
【手仕舞いをするリスク2】損失確定
下落相場で損切りをして損失確定をすることは、下落相場が続くリスクを回避するためには有効な手段です。早めに手仕舞いをして、損失を少しでも抑えることができるでしょう。
しかし、読みが外れて形勢が反転し、価格が上がる可能性もあります。「あのとき手仕舞いをして損失を確定させなければ良かった」と後悔するかもしれません。
【手仕舞いをしないリスク1】損失拡大
下落相場において、「いつかは相場が上昇に転じるだろう」と判断し、手仕舞いをせずに株式や投資信託を保有し続けたとしましょう。予想通りに相場が上昇に転じれば良いのですが、下落相場が続く可能性もないわけではありません。
下落相場が続いたときは損失がさらに拡大し、「あのとき手仕舞いをしていたら良かった」と後悔することにもなるでしょう。
【手仕舞いをしないリスク2】形勢逆転
上昇相場において、「少しでも長く保有して、利益をさらにふやそう」と考え、手仕舞いをせずに株式や投資信託を保有し続けたとしましょう。予想通りに上昇相場が続けば良いのですが、形勢が逆転して下落相場に転じ、急激に価格が下がって含み損(決済をすれば損失が確定する状態のこと)が生じかねません。
「あのとき手仕舞いをしていたら、少しとはいえ利益を得られたのに」と後悔することにもなり得ます。損失拡大や形勢逆転などによるリスクを回避するためにも、損切りラインや利益確定の目安を決めておき、手仕舞いするタイミングを逃さないようにしましょう。
まとめ
手仕舞いとは、将来起こり得るリスクに備えて決済をすることを指します。含み損が生じているときには損失を確定することにもなりますが、損失額を抑える効果が期待できるでしょう。
実際のところは、手仕舞いをすることにもしないことにもリスクがあります。やみくもに手仕舞いをするのではなく、損切りラインや利益確定の目安などの「自分にとっての手仕舞いの基準」を決めておき、妥当と思われるタイミングで手仕舞いできるようにしておきましょう。