証券会社の口座には特定口座と一般口座があり、口座を開設する際に選択ができます。特定口座はさらに「源泉あり」「源泉なし」のいずれかが選べ、1年間の損益について計算してくれるのが特徴です。
本記事では特定口座の内容ついて説明し、選び方なども紹介します。
目次
特定口座とは株式投資で開設する口座の1つ
株式投資をするときは証券会社で口座を開設する必要があり、一般口座と特定口座のどちらかを選ぶことになります。一般口座は1年間の売買損益を自分で計算しなければなりませんが、特定口座は証券会社が計算してくれるという違いがあります。
さらに、特定口座では源泉徴収ありなしを選択することになり、源泉徴収ありを選べば確定申告が不要です。詳しい内容を見ていきましょう。
一般口座との違い
証券会社の口座には一般口座と特定口座があり、どちらを選ぶかは確定申告の際に大きな違いがあります。特定口座は、証券会社が株取引の利益や損失を計算し、「年間取引報告書」という書類を作成してくれます。一般口座ではこのような計算が行われません。
「年間取引報告書」は確定申告に必要な書類であり、自分で作成するのは大変です。そのため、ほとんどの方が特定口座を選んでいます。
特定口座はさらに「源泉徴収あり」と「源泉徴収なし」を選択しますが、こちらについては後の項目で詳しく説明しましょう。
NISA口座とはどう違う?
証券会社によってはNISA口座を扱うところもあります。NISAとは「少額投資非課税制度」のことで、投資による利益が年間120万円以下であれば非課税になる制度です。
株取引などの利益には通常、所得税(15.315%)と住民税(5%)の合計で20.315%の税金が課せられますが、NISA口座であれば非課税のため利益を100%受け取れます。
年間の利益が120万円に達しないと予想される場合は、NISA口座を選ぶのがお得です。ただし、損失が出た場合に他の口座と損益通算などはできないということを把握しておきましょう。
確定申告との関係
特定口座はさらに「源泉徴収あり」と「源泉徴収なし」に分かれ、「源泉徴収あり」を選ぶと確定申告をする必要がありません。株取引で利益を得たつどに証券会社が税金を自動で差し引くからです。
損失が出た場合は、差し引かれていた税金から還付されます。確定申告の必要がないため、扶養に入っている方が利益を上げても扶養から外れる必要がありません。
特定口座の「源泉徴収あり」は確定申告の手間がなく便利ですが、払う必要のない税金まで支払う結果になる点に注意が必要です。
給与所得者や年金所得者で取引の利益が年間20万円以下の場合は非課税となり、納税の必要が必要ありません。にもかかわらず特定口座の「源泉徴収あり」を選んだ場合、税金が徴収されてしまいます。
一度徴収された税金は還付請求できないため、取引の機会があまりなく利益が少ないと予想される場合は「源泉徴収なし」を選ぶのがよいでしょう。
開設方法
口座の開設は、店舗かインターネット、電話で口座開設申込書を請求します。送られてきた申込書に必要事項を記入し、本人確認書類などの必要書類を添えて提出すれば完了です。
特定口座や源泉徴収のありなしは申し込みの際に選択できます。
ネット証券の場合はネットだけですべての手続きが完了し、最短申し込み当日から取引を始められる会社もあります。
源泉徴収ありなしの変更時期や方法は各証券会社で異なるため、申し込み後に変更したくなった場合は問い合わせてみるとよいでしょう。
特定口座の特徴
前項で説明したように、特定口座は源泉徴収ありとなしを選ぶことになります。源泉徴収ありは確定申告する必要がないため手間がありませんが、利益が少ないことが明らかな場合は「なし」を選び、結果的に利益が多く出た場合には確定申告するのがよいでしょう。
確定申告する場合でも証券会社が1年間の損益を計算しているため、比較的簡単に申請できます。ここでは、「源泉徴収あり」と「源泉徴収なし」の特徴について見ていきましょう。
1.源泉徴収あり
「源泉徴収あり」では、証券会社が口座内の譲渡損益を計算し、所得税と住民税を投資家に代わって納税します。面倒な確定申告の手間がないというのが大きなメリットです。
ただし、他の口座で損失があり、通算して還付を受けることができる場合は、自分で確定申告しなければなりません。その場合でも証券会社が作成した「特定口座年間取引報告書」があるため、手続きは簡単に済ませることができます。
2.源泉徴収なし
「源泉徴収なし」を選んだ場合、証券会社では税金を差し引かないため、投資家自身で確定申告しなければなりません。その際も、証券会社が1年間の売買損益を計算して「特定口座年間取引報告書」を作成しているため、自分で面倒な計算する手間は省けます。
ただし、源泉徴収なしを選んで確定申告をする場合、配偶者控除や扶養控除等の適用を判定する際の合計所得金額に合算される点に注意しましょう。利益の額により、扶養から外れる可能性があります。
また、国民健康保険に加入している場合は、確定申告により保険料が増える可能性があるでしょう。国民健康保険料は前年の総所得金額をもとに地方自治体が定めますが、株取引の利益を申告することで、翌年の国民健康保険料にも影響を与えます。
特定口座「源泉ありなし」の選び方
特定口座の源泉徴収ありなしについて特徴を確認してきましたが、実際にどちらを選べばよいかは、投資のスタイルによっても異なります。
取引に時間をかけ、投資家として本格的に取り組む場合、利益を見込んで「源泉あり」にするのもよいでしょう。
サラリーマンが副業で空いている時間だけ取引するなど、利益が少ないと予想されるときは「源泉なし」が向いています。ここでは、それぞれの選び方について見ていきましょう。
「源泉あり」は損益通算して源泉徴収
「源泉あり」は確定申告が不要になることがメリットです。また、上場株式配当等受領委任契約を締結ことで口座内に配当金を受け入れ、損失との損益通算もできます。配当金にも税金がかかり源泉徴収されますが、譲渡損失が出た場合に通算することで、配当金の税金を減らすことができるのです。
本来であれば、損失と配当金の損益通算は確定申告が必要ですが、上場株式配当等受領委任契約を結ぶことで、確定申告なしに自動で通算されます。
受領委任契約は特定口座の開設と同時に自動締結される証券会社もありますが、扱いは会社ごとに異なるため問い合わせてみるとよいでしょう。
「源泉なし」でも確定申告書の作成は簡単
年間の利益が20万円以上見込まれない場合は、「源泉なし」を選びましょう。結果として利益が多く確定申告が必要な場合でも、損益の計算は証券会社が行うため、確定申告の作成は簡単です。
また、複数の口座を保有して取引している場合も損益通算のために確定申告が必要になるため、「源泉なし」にしておくのがよいでしょう。
「源泉なし」で確定申告する方法
「源泉なし」を選んだ場合は確定申告しなければなりませんが、損益の計算は済んでいるため手続きは容易です。
証券会社から1月末までに「特定口座年間取引報告書」が送られてくるため、そちらに記載されている内容を確定申告書に転記するだけで済みます。郵送されてこない場合は問い合わせてみましょう。ここでは、報告書の内容について紹介します。
「特定口座年間取引報告書」を確認
「特定口座年間取引報告書」は年間で取引があった顧客に対し、1月になってから順次発送されます。電子交付サービスを申し込んでいる場合は、Webサイト上で1月なかばごろから閲覧できるため確認してみましょう。
報告書は1年間の譲渡損益や配当金、それらに対する源泉徴収額が記載されているものです。記載されている数字を確定申告書の該当欄に記載して提出します。
「源泉あり」でも確定申告が必要なケース
「源泉あり」を選択している場合でも、確定申告が必要になる場合があります。譲渡損失が出ている場合、他の証券会社でも取引している場合です。
譲渡損失を出した場合は、損失額を翌年以降に繰越控除できる制度があります。他の証券会社の分と損益通算して源泉徴収の過払いがある場合は、確定申告により還付を受けることも可能です。それぞれについて紹介しましょう。
譲渡損失の繰越控除をする
譲渡損失が出ている場合は、損失額を翌年以降3年間持ち越し、その年の譲渡利益や配当所得と相殺できます。「譲渡損失の繰越控除」という制度で、繰り越すためには必ず確定申告しなければなりません。翌年に控除しきれない金額は、3年間にわたり控除できます。
例えば100万円の損失が出た場合、翌年に30万円の利益があれば相殺され、30万円には課税されません。残った70万円の損失は、さらに翌年に持ち越せます。
他の証券会社での取引と損益通算する
複数の口座で取引している場合、合算することで源泉徴収額が還付される可能性があります。それぞれの特定口座で年間の損益が算出され、「特定口座年間取引報告書」が交付されるため、それらを損益計算してみてください。源泉徴収を払いすぎている分があれば、確定申告により還付されます。
例えば、2つの特定口座で取引をしていてA証券会社で10万円の利益が出ている場合、20.315%の源泉徴収がされています。一方、B証券会社では10万円の損失を出している場合は損益通算してA証券の利益はなくなるため、確定申告することで源泉徴収された約2万円が還付されるでしょう。
繰越控除の損失と損益通算する
譲渡損失の繰越控除は3年間行えるため、前年より持ち越された損失があれば、その年も確定申告する必要があります。その年の利益は特定口座内で源泉徴収されますが、前年の損失を繰越控除することで、差し引かれた税金が戻るわけです。
繰越控除のたびに確定申告が必要になるため、前年に控除したあとも損失が残っている場合は忘れずに確定申告しましょう。
配当控除の適用を受ける
配当控除の適用を受ける場合にも、確定申告が必要です。株式を保有していて配当金を受け取る場合、配当金にかかる税金は源泉徴収されるため、確定申告をする必要はありません。
しかし、所得が一定額以下の場合や取引で損失を出した場合は税金を納めすぎている可能性があり、確定申告をすることによって取り戻すことが可能です。
まとめ
特定口座は証券会社が損益計算を行い、計算をまとめた報告書を作成してくれます。さらに、「源泉あり」の口座を選べば利益から源泉徴収されるため、確定申告をする必要もありません。
ただし、譲渡損失が出た場合や複数の口座で取引をしている場合は、確定申告が必要です。自身の投資のスタイルに合わせ、最適な口座を選びましょう。