ナスダックはアメリカにある株式市場のひとつです。立会場のない電子取引所で、もともとベンチャー企業中心で開始されました。現在はIT関連の大企業が名を連ねるという特徴があります。
今回はナスダックの内容を説明し、株価指数であるナスダック100について紹介しましょう。
目次
ナスダックとはアメリカを代表する株式市場の1つ
ナスダックとは、アメリカを代表する証券取引所です。「National Association of Securities Dealers Automated Quotations」の頭文字を取った略称で、1971年に世界初の電子株式市場として開設されました。
アメリカにはもうひとつの株式市場として、NYSE(ニューヨーク証券取引所)があります。この項目では、ナスダックとNYSEの違いやナスダックに上場している主な企業、ナスダックで株を購入する方法などを見ていきましょう。
NYSEとの違い
ナスダックと並んでアメリカの2大株式市場とされるNYSEは、以下の図表の通り世界最大級の規模を誇る株式市場です。NYSEにはコカ・コーラやウォルト・ディズニー、ゴールドマン・サックスなど、比較的歴史のある大企業が集まっています。
2021年2月現在、これら市場の上場企業数は、NYSEが2,873社、ナスダックが3,055社となっています。かつては、ベンチャーなど新しい企業を扱うナスダックと老舗企業が集まるNYSEという違いがありました。しかし、近年はナスダックにも大企業が増え、NYSEにもTwitterなど比較的新しい企業が多く上場されはじめています。
また、NYSEは立会場があり、ナスダックは立会場のない電子取引所という違いもありましたが、NYSEは2013年に電子取引市場を運営するインターコンチネンタル・エクスチェンジに買収されて電子取引が基本になり、さらに両者には違いがなくなっています。
参考:野村資本市場研究所「市場の各種推移」
主な上場企業
ナスダックは、アメリカのベンチャー企業向け株式市場として始まりました。上場企業には成長力のあるIT企業が主流を占め、現在はAmazonやApple、Google、マイクロソフトといった、世界に名をはせる大企業が上場しているのが特徴です。
また、日本からも日産自動車や任天堂など、多くの大企業が上場しています。
購入方法
ナスダックの株式を日本で取引したい場合、証券会社からの購入が可能です。ただし、どの証券会社でもアメリカの株を扱っているわけではなく、取り扱う銘柄も証券会社によって異なります。証券会社ごとの特徴を確認し、自分に合ったところを選ぶことが大切です。
なお、日本の株は100株を1単元として最低購入金額が設定されていることも少なくありませんが、アメリカ株はほとんどの銘柄で1株からの購入が可能です。
メリット・デメリット
ナスダックの株は、市場規模が大きいというメリットがあります。上の図表を見てもわかるように、ナスダックはNYSEには及ばないものの日本に比べ3倍近く大きい市場です。上場企業の数が多ければそれだけ投資先を選びやすく、AppleやAmazonなど躍進を続ける企業の株も購入できます。また、成長が期待できるIT関連株を購入できるのもメリットです。
ただし、アメリカの株式市場ということで、情報を収集しづらいというデメリットがあります。情報を見つけられても英語力が必要になるなど、日本市場での取引に比べて制約があることは否定できません。
ナスダック3つの特徴
ナスダックには他の市場にはない、いくつかの特徴があります。利回りが高く、株価指数は長期的にみると史上最高値を更新し続けているのは、成長が著しいIT関連株が主流を占めるナスダックならではといえるでしょう。
配当の頻度が高いのも、日本の株にはない部分です。ここでは、ナスダックに特有の3つの特徴について紹介します。
1.利回りが高い
ナスダックは利回りが高いことが特徴です。ナスダックに上場する銘柄のうち上位100社を対象にした指数では、利回りが年率11%を超えています。
過去10年で見れば、2010年以降のIT株躍進の影響もあり、年率18.7%という高い数字をあげています(2021年1月末時点)。ナスダック株の購入で、高いリターンを得られる可能性が高いといえるでしょう。
2.指数は長期的に右上がり傾向
ナスダックの値動きは、1991年以降長期的に右上がり傾向です。途中には2000年のITバブル崩壊やその後のイラク戦争、リーマンショックといった大きな経済危機があり、短期的に見ると株価は下落しています。
しかし、長期的に見ると株価は右上がりで史上最高値を更新し続けているのです。NYダウなど他の株価指数と比べても、ナスダックは圧倒的に利益を出し続けているのが特徴です。
3.配当の頻度が高い
日本の銘柄では配当の頻度が平均して年2回なのに対し、ナスダック株は年4回と頻度が高いのも特徴です。アメリカでは株主への利益還元を重視している企業が多く、配当利回りも高い傾向があります。
ただし、ナスダックを代表する企業のひとつであるAppleなどは株主還元に積極的ではなく、配当利回りも1%以下と低めです。 また、Amazonは配当を行わず、事業利益をすべて再投資に回しています。配当を目的に株を購入する場合は、よく確認した方がよいでしょう。
指標となるのはナスダック総合指数
ナスダックの値動きについて指標となるのが、ナスダック総合指数です。1971年に算出が開始され、この日の終値を基準値の100として計算されています。1971年を基準に、現在の時価総額合計額が何倍になったかがわかるものです。2021年7月12日現在のナスダック総合指数は14,702であり、147倍成長したことがわかります。
なお、ナスダック総合指数とは、ナスダックに上場している約3,000以上の全銘柄を対象に算出したものです。それとは別に、アメリカ株式市場を代表する指数に「ナスダック100」があります。ここではナスダック100について説明し、そのほかの指標であるNYダウやS&P500についても紹介します。
上位100社で構成するナスダック100
ナスダックの全銘柄のうち、時価総額が高い上位100銘柄から算出した指数がナスダック100です。ナスダック総合指数と同じく、IT関連株の動向を把握するのに役立ちます。
ナスダック100は時価総額が大きくなりやすい金融セクターを除外しており、ナスダック総合指数よりもさらにIT企業の影響が強い株価指数となっているのが特徴です。
市場の動きで時価総額は変動するため、ナスダック100は定期的に銘柄入れ替えが行われています。
NYダウとの違い
NYダウは正式名称を「ダウ工業株30種平均」といい、工業系に限らずアメリカを代表する幅広い30銘柄を選んで算出した株価指数です。NYSEに上場の銘柄が中心ですが、Appleなどナスダックの企業も選出されています。NYダウの選出にはナスダックのような定量的な決まりがなく、企業の評判や成長性などを評価して決定しているのが異なる点です。
S&P500との違い
S&P500は、NYSEとナスダックに上場するアメリカ企業500銘柄を対象とした指数で、アメリカ市場の時価総額のうち8割をカバーしています。
時価総額や流動性、浮動株の比率などさまざまな条件で選出されているため、現在の勢いが最も強い企業が揃っている指標といえるでしょう。対象銘柄の数も多く、特定の銘柄による影響を受けにくいのも特徴です。
S&P500はアメリカ企業のみで構成されているのに対し、ナスダックは外国企業も対象となっており、より世界を代表する企業の動向がわかる指数となっています。
日経平均との違い
日本にも株価指数はたくさんありますが、その代表といえるのが日経平均です。東京証券取引所1部上場企業のうち、流動性の高い225銘柄を日本経済新聞社が選出しています。
日経平均は製造業の比率が高く、経済の動向に左右されやすいのが特徴です。一方、IT関連が主流のナスダック100は安定性があり、日経平均に比べて指数は上昇の傾向にあります。
新型コロナウイルス流行の影響を受けてIT化が加速するなかで、今後はさらに成長することが予想されるでしょう。
ナスダック100に投資する方法
ナスダック100に投資する場合、ETFか投資信託を利用するのがおすすめです。これら商品はナスダック100の値動きに連動しているため、個別に株を購入するよりもリスクを抑えることができます。
自身の投資スタイルに合わせ、適していると思われるものを選ぶとよいでしょう。ETFと投資信託の特徴について紹介します。
リアルタイムで売買できるETF
ETFとは上場投資信託のことです。投資信託が証券取引所に上場しているため、株と同じく証券会社を通した取引ができます。
ナスダック100の動きに合わせてリアルタイムで投資するため、投資先を選ぶ手間がありません。初めての投資でどの銘柄を選べばいいのかわからない場合に向いています。一般的に、投資信託よりも手数料や信託報酬が安いのが特徴です。
少額から投資できる投資信託
投資信託は、投資家が運用資金を渡し、代わりに運用してもらう商品です。ファンドマネジャーと呼ばれる運用のプロが株式や公社債、不動産などさまざまな商品に分散投資して、利益を獲得します。
1万円程度から始められ、分散投資でリスクも分散できるのがメリットです。ただし、必ず利益が出るというものはなく、元本も保証されません。
まとめ
ナスダックはアメリカを代表する株式市場です。株価指数のナスダック100は、世界のIT関連株の動きがわかります。右肩上がりに史上最高値を更新しているのが特徴で、今後も成長が予想されている指数です。日本の証券会社からも購入でき、ETFや投資信託といった商品が用意されています。それぞれに特徴があるため、自分に合うものを選び、運用してみるとよいでしょう。