目次
はじめに
スイッチングとは、「投資信託の買い替え」のことです。現在保有している投資信託を売却し、他の投資信託を購入する場合や、同一の投資信託で、その商品に組み込まれる金融商品を乗り換える場合に使います。スイッチングは、運用目的や投資方針に応じて、組み入れる金融商品を変更できる便利な機能です。
そして、スイッチングはiDeCo(個人型確定拠出年金)での運用にも効果的といえます。iDeCoは自分で決めた額を積み立て運用し、60歳以降に受け取ることができ、税制面でも優遇が受けられるお得な年金制度です。
iDeCoでは、最初にどの金融商品に積み立てをするか決めますが、長期で運用するにつれて、資産の構成割合や投資意向が変わることもあるでしょう。年齢や環境の変化で、運用変更の手続きをおこなう方法は「配分変更」と「スイッチング」の2つがあります。この記事では、iDeCoにおける「配分変更」と「スイッチング」をおこなうタイミングやメリット、注意点について、知ることができます。
iDeCoの管理と運用は「配分変更」と「スイッチング」でおこなう
積み立ての「配分変更」はいつでもできる
iDeCoでの積み立ての「配分変更」はいつでもできます。配分変更とは、次回の積み立てからの商品や配分を変更する運用指図のことです。iDeCoの場合、投資信託や保険、定期預金、国債などの金融商品にどの割合で積み立てするかを自由に決められます。例えば、月々2万円を積み立てているなら、そのうちの、10%を定期預金、20%を保険、30%をA投資信託、20%をB投資信託、20%をC投資信託、というように、全体で100%になるように、配分と商品を自分で指定するのです。
また、iDeCoはネットで専用ページにログインすると簡単に、割合を変えたり、現状確認ができるのも便利です。なお、配分変更の場合には手数料はかかりません。
スイッチングとは
スイッチングとは、今まで運用していた投資信託を売却し、別の商品を購入する手続きのことです。スイッチングは、現在利益が出ていても、今後値下がりしそうな場面で、期待できる資産に預け替えしたり、定期預金に移し、利益を確定するためにおこなうと効果的でしょう。
たとえばA投資信託に組み入れられているものを売却し、B投資信託とC投資信託に投資するなど、自由に売却が可能です。現在運用している資産の全てを売却することも可能ですが、資産の一部を別のものに預け替えすることもできます。
iDeCoの場合、利益に対して税金がかからないため、スイッチングの売却益についても税金は発生しません。ただし、スイッチングの際には、投資信託に信託財産留保額(解約時の手数料)が設定されている場合もあるので、注意が必要です。
「配分変更」や「スイッチング」をおこなうべきタイミングは?
iDeCoは60歳まで拠出し続ける制度ですので、長い人だと40年近く運用することとなるでしょう。そのため、金融商品の売買やリバランスを考えるときがくるはずです。「配分変更」や「スイッチング」はどのようなタイミングでおこなうとよいのでしょうか。
■大きく資産配分する場合には「スイッチング」と「配分変更」を
長期的な目線ですが、iDeCoを開始した若い世代と、60歳間近の世代とでは、適切なリスク資産の配分も異なってきます。アメリカでは、リスク資産の配分の目安として、「100-年齢」といわれています。たとえば、運用期間の長い30歳前後であれば「100-30」で7割ほどの資産が投資信託や株式でもよいでしょう。iDeCoの運用も投資信託の比率を高めに設定し、ある程度リスクをとった運用で大きくリターンを目指すこともできます。一方、iDeCoの受け取りが近い50代では、損失を食い止めるためにも、リスクの小さい国債やバランス型の投資信託の比率を高めるのもよいでしょう。
このように年齢や考え方の変化によって、投資方針を大きく変更する場合には「スイッチング」をおこない、運用残高を変更しましょう。また、今後の拠出割合や投資先を変更するためにも、「配分変更」も忘れずにおこなってください。
■相場の変動時にも「スイッチング」が効果的
短期的な目線ですが、投資環境が大きく変動したタイミングでは、株式や不動産(REIT)、債券などの資産の基準価格も変動し、損失がでることもあります。一般的に、積み立ては中長期目線で、相場の下落時にもコツコツと積み立てることが効果的ですが、今後の値上がりが期待できない場合には、「スイッチング」も必要です。
また、マーケットの変動によって、自分で決めていた資産配分と比べ、運用残高の配分がずれてくることもあるため、「スイッチング」で元の配分に微調整することもできます。
■時期を決めて定期的に見直そう
iDeCoは何もせず放置するよりも、定期的に資産配分をリバランスしたほうが、リスクやリターンが安定します。そのため、「運用状況の案内」が送付されるタイミングや誕生日など、わかりやすい時期を決めておき、資産配分を見直すことが大切です。年に1度は資産状況をチェックする習慣をつけましょう。資産配分の見直しが大切ではありますが、頻繁にリバランスする必要はありません。あくまでも長期目線での運用に軸足を置き、年1回程度でよいでしょう。
「配分変更」や「スイッチング」の注意点
iDeCoは定期的に運用状況を確認しながら、長期運用することが大切です。数十年にわたる運用で、不可欠な「配分変更」や「スイッチング」ですが、いくつか注意点があります。
相場の下落時に慌てて「スイッチング」は危険
相場の下落時の売却には注意が必要です。iDeCoはセカンドライフ資金であるため、相場の下落時に「損したくない」「減らしたくない」という思いから、売却してしまう人もいるでしょう。しかし、慌てて売却してしまうと結果的に大きな損失を出してしまい、iDeCoの受取金額が少なくなることもあります。昨今のコロナショックでも株価は大きく下落しましたが、その後回復しています。短期的な目線で、相場の下落に慌てて売却せず、定期的に資産状況を確認することが大切です。
そして、若い世代の場合、損失が出ていても受け取りまでの時間は十分にあるため、極力積み立てを継続しましょう。iDeCoの受け取りが近い50代では、徐々に資産の受け取りも視野に入れ、リスク資産の割合を下げることをおすすめします。
長期投資でも、完全なほったらかしには注意
iDeCoは長期運用ですので、加入したまま放置している人も多いのではないでしょうか。残高の照会や組み入れ銘柄を把握していないままに、ほったらかし状態であると、相場の急落時には大きな損失が出てしまいます。特に、定年に近い人ほど徐々に変動幅の少ない資産にスイッチングが必要です。株価の暴落時に備えて、一定の利益が出たら定期預金に移すなど、見極めるようにしましょう。定年が近づいたら、徐々に運用リターンを年率1~3%ほどまで調整していくことも大切です。
iDeCo(イデコ)とは何か?
iDeCoとは、個人型確定拠出年金の愛称です。
制度としては、自分で決めた額を積み立て運用し、60歳以降に受け取ることができる自分年金と言うことができます。税金が優遇されているので、とてもお得な制度なのです。
iDeCo(イデコ)の概要
では、その概要を説明します。
ちなみに、iDeCoは「個人型」確定拠出年金の愛称なのですが、他に「法人型」確定拠出年金というものもあり、「401k」と呼ばれることもあります。いずれも制度の概要はほぼ同じですので、個人型でも法人型でも参考にしてください。ここで、iDeCoのポイントを3つご紹介します。
自分年金として加入する
iDeCoを利用するかどうかは、各人の自由です。公的年金(国民年金や厚生年金)は加入が義務とされているのに対し、iDeCoは「自分で入る私的年金」という位置づけです。つまり、自分で老後資金を準備するものとして活用でき、毎月一定額を積み立てます。
平成29年1月から、20歳以上60歳未満のすべての方が加入できるようになりました。
(勤務先が企業型確定拠出年金に加入している方は、原則としてそちらに加入することになります。規約で定めている場合は、両方に入れます)
掛け金を自由に決められます
毎月拠出する掛け金は、自分で決めることができますが、ご自身の状況によって掛け金の上限が変わります。少し分かりにくいので図で解説します。
※国民年金基金連合会iDeCo公式サイトより抜粋
「拠出限度額」というところが、毎月の積み立て金の上限です。
状況によって違うというのは、主婦の方なのか、会社員の方なのか、といった感じであなたの属性で変わるということです。
例えば、主婦の方は、月額2.3万円(年間で27.6万円)が上限です。
自営業の方は、月額6.8万円(年間で81.6万円)、公務員の方は、月額1.2万円(年間14.4万円)が上限ということになります。
会社員では、会社が「企業型確定拠出年金」を導入していない場合、月額2.3万円(年間で27.6万円)が掛け金の上限になります。
会社が、企業型確定拠出年金を導入している場合、会社によって掛け金が異なることがありますので、お勤めの会社に確認が必要です。
いずれにしても、会社員の方は、まずはご自身がお勤めの会社が、「企業型確定拠出」に加入しているかどうか、を確認し、それから、掛け金の上限を確認しましょう。
iDeCoの場合は、最低投資額は5000円です。企業型の場合は会社に確認してみましょう。
掛け金の金額は変更することが可能ですが、年に1回しか変更ができません。掛け金の設定については別の記事で触れますが、無理のない金額にしておくのが鉄則です。
掛け金は自分で運用できます
iDeCoの掛け金は、それぞれの金融機関へ積み立てられ、そのお金は自分で運用を行うことができます。iDeCoの運用は、投資信託や保険、定期預金などの金融商品から選択が可能です。取り扱いの金融商品は金融機関によっても異なりますので、どんなものがあるか、手数料はいくらなのか、事前に確認するようにしましょう。運用が分からない人のために、必ず、元本保証の定期預金などが含まれていますので、「投資ができないから不安」という方でも大丈夫です。そして、慣れてきたら「スイッチング」をおこない、投資信託で運用するなど、自由に決めることができます。
まとめ
iDeCoは、60歳までの長期運用ですので、途中で「配分変更」や「スイッチング」が必要な場面がでてくるでしょう。特に、iDeCoは受け取り時期が決まっている老後資金であるため、終盤でのリスクヘッジが大切です。頻繁に売買する必要はありませんが、インターネットでiDeCoのマイページにログインし、残高や組み入れ資産を確認しておきましょう。