金で資産運用ってどうなの?安全性やリターン、投資手法を解説

ゴールドバー

金を資産運用する場合、金の特性を理解したうえで投資をすることが重要です。

本記事では、金の資産としての価値や資産運用におけるメリットとデメリット、金の投資商品 、資産運用する方法と目的などについて説明します。金の資産運用に興味のある人は参考にしてください。

金が守りの資産といわれる2つの理由

手のひらにあるお金と芽

一般的に、金は「守りの資産」と言われています。ここでは、なぜ金が「守りの資産」と言われるのか、その理由を2つ説明しましょう。

1.世界共通の価値を持っているから

金の最大の特徴は、金の価値が世界共通であることです。国が発行する通貨(日本の円やアメリカの米ドルなど)は、その国の経済状況や世界情勢などによって価値が変動します。

極端なたとえですが、日本が戦争に巻き込まれ日本の経済が悪くなることが予想されると、日本の円はほかの国の通貨に対して価値が下がってしまうでしょう。1ドル=100円だったものが、1ドル=300円になる可能性もあります。

しかしこのような場合でも、日本にある金の価値がほかの国にある金の価値と比べて、価値が下がることはありません。つまりどのような状況でも、金は世界中で同一の価値を持ち続けるということです。

株や債券についても通貨と同じことが言えます。企業が発行する株式であれば、企業が倒産すると株式は紙切れになってしまいます。

「有事の金」と言われるように、金には信用リスク(発行元の破綻リスクや価値の低下)がないため、政治や経済に不透明感が高まるとリスクヘッジの役割を果たします。リスクヘッジとは、危険を予想し、その危険を避けようとすることです。この場合、株や債券が暴落した場合に備えて、価値の下がらない金を購入することを言います。

このような金の性質から、1800年代、イギリスを中心に「金本位制」という金を通貨価値の基準とする制度が採用されていました。共通価値を持つ金と国の通貨を一定比率で交換することを国が保証すれば、安心して他国と貿易ができるからです。そのため、それぞれの国では、発行した通貨と同額の金を保管しておく必要がありました。

しかし第一次世界大戦による対外債務の支払いに金が必要となったことで、各国で金本位制を維持することができなくなり、現在は国が通貨量を調整する「管理通貨制度」が採用されています。

2.インフレ&デフレの両方に強いから

金が守りの資産と言われる理由に、インフレ&デフレの両方に強い点が挙げられます。インフレとは、持続的にモノの価値が上がることで相対的に通貨価値が下がってしまうことです。金はモノであるため、インフレになると価値が上がります。インフレに強いと言われるのはこのためです。

「金はインフレに強い」と言われていましたが、昨今は「デフレにも強い」と言われ始めています。デフレとは、景気が悪くなり物価が下がり続けることです。

通常、景気が悪くなると企業や国の信用度が下がりますが、その結果、株や債券の価値も下がってしまいます。しかし金は信用リスクとは無縁のため、デフレになると人気が高まり価値が上がるのです。これが、金はデフレにも強いと言われる所以でしょう。

金の資産運用における2つのメリットとは

pointと書かれたブロックとお金

金の資産運用には、ほかの金融商品に比べてどのようなメリットがるのでしょうか。ここでは、金の資産運用におけるメリットとデメリットを説明します。 まずは、金の資産運用におけるメリットから理解しましょう。

1.実在するため無価値になることはない

ひとつめのメリットは、金はこの世の中に物理的に実在するため無価値にならないことです。通貨や株、債券は、発行する発行元(国や企業など)があり、その発行元が破綻すると価値が下がったり、最悪のケースでは価値が無くなったりします。

しかし金はどこかの機関が発行しているわけではないため、そのようなリスクとは無縁です。

2.世界市場において同じ価値で取引ができる

ふたつめのメリットは、世界市場において同じ価値で取引ができることです。金は世界で同じ価値を持っているため、ほかの資産と比べると換金しやすいといった特徴があります。

たとえば、日本で買った金をほかの国に持っていっても、その価値が変わることはありません。どこの国でも「金は希少価値のある鉱物」として同じように認識されているため、売る際にも同じ価値で取引ができるのです。金を売りたい場合は、世界の市場で買い手を見つけることができます。

2000年以降、金の価格は上昇し続けています。次の図を見てみてください。

2000年以降の金価格の推移

金の価格が上昇しているということは、金を購入する人が世界中で増えていることを意味します。金での資産運用に人気が集まっていることが分かるのではないでしょうか。

金の資産運用における2つのデメリットとは

円を指差している男性

金の資産運用においては、メリットばかりではなくデメリットもあります。金の資産運用を検討する場合は、デメリットをきちんと理解することが大切です。

1.配当や利子といった利益が得られない

ひとつめのデメリットは、金は配当や利息を得られないということです。

投資対象には株式、債券、投資信託などさまざまなものがありますが、金とは大きく異なる点があります。預金や債券ならば利息、株ならば配当金や株主優待がもらえるように、他の投資対象には保有していることで得られる利益があるのです。保有することで利益が得られるという意味では、不動産投資における賃料収入も同じでしょう。

これに対し金は、地金や金貨といった現物を保有してはいるものの、配当や利息は得られません。金で利益を得るのは、売却するときに得られる売却益だけです。

2.管理するコストや紛失などのリスクがある

金には高い価値があるため、常に盗難の危険があります。盗難リスクを避けるには、金を取り扱う会社の保管サービスの利用や銀行の貸金庫に預ける方法があるでしょう。

当然ながら、保管を依頼した場合には保管コストがかかります。保有することでリターンが見込めないばかりか、保有することで保管コストがかかり、むしろマイナスになることもあるのが大きなデメリットと言えるかもしれません。

金の代表的な投資商品4選

コインと芽

金への投資方法にはいくつか種類があります。代表的な4つの投資商品について特徴を紹介しますので、金への投資を検討する際の参考にしてください。

1.需要が伸びつつある金地金

金投資といえば、金地金を思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。金地金とは、いわゆる「金の延べ棒(ゴールドバー)」のようなイメージです。 1キログラムでなんと約650万円(2021年3月12日の終値6,682円/gで計算)と、多くの人にとって手が出ない価格でしょう。

しかし、金地金の購入は、いくつかの重量タイプから選択できるように商品設計されています。例えば、田中金属工業では5グラムから購入可能です。

最近では、株式や債券など、色々なものに投資する中で一部を金に分散投資するために100グラム以下の人気が高まっています。

2.政府が保証する地金型金貨

地金型金貨は、金地金を加工して作った金貨のことを指しています。

地金型金貨の特徴は、金地金と同じ99.99%の純金製であることを発行国の政府が保証していることでしょう。 様々なサイズが用意されており、1/10トロイオンスのものから売られています。金地金よりも小さい単位で購入できることも特徴のひとつです。

※1/10トロイオンス≒3.1グラム

3.少額から始められる純金積立

純金積立は、積立預金や積立投信などのように、金を積み立てていくものです。金地金や地金型金貨よりもさらに少額から始められるのが特徴でしょう。

例えば、三菱マテリアルでは3,000円以上から積み立てを受け付けています。予算はあまりないが、金の積み立てをしたい方には購入しやすい投資対象です。

4.手数料が安い金ETF

金ETFは、金価格に連動する金融商品です。 そもそもETFとは、証券取引所で売買できる投資信託(複数人から資金を集めて運用する機関)を意味します。つまり金ETFは、「複数人から資金を集めて金で運用する投資信託であり、なおかつ証券取引所に上場しているもの」のことです。

市場連動型の投資信託が手数料の安さを売りにしているのと同じく、金ETFも手数料が安いことが特徴です。また、少額からの買い付けできることも特徴のひとつでしょう。

初心者が金で資産運用する方法と目安は?

3つの旗

上記で挙げた4つの金融商品のうち、これから金投資を始めたい人におすすめなのは純金投資と金ETFです。それぞれの商品が初心者におすすめである理由について解説します。

方法1.着実に資産を形成できる純金積立

初心者におすすめの金への投資方法として、金を積み立てて資産運用する純金投資が挙げられます。純金投資が初心者に向いている理由は以下の2点です。

高い金を少額ずつ積み立てる

金地金でも触れた通り、一般的に金投資は多額の資金を要するものと思われがちですが、純金積立ならば少額から始められます。高額な金という商品を少額ずつ積み立てられるのが魅力です。

例えば「毎月5,000円買う」などの条件で申し込んでおけば、毎月決まったタイミングで口座から引き落とされます。インターネットなどから申し込みができる業者も多く、始めやすいことも初心者におすすめできる理由でしょう。

デメリットは年会費や購入手数料がかかるため、積み立てる金額が少額であればあるほど1グラムあたりの購入単価が割高になることです。それでも、金によって地道に資産形成したい人には向いている方法と言えます。

ドル・コスト平均法の強み

純金積立の大きなメリットは、ドル・コスト平均法の恩恵を受けられることです。 ドル・コスト平均法とは、「定期・定額」で購入し続けることによって、買値を平均化する分散投資の方法のひとつです。

自分の良いと思うタイミングで購入すると高値買いとなってしまう可能性も高く、時には多額の資金を投じることとなります。もし、高い水準で買ってしまえば大きな損失を被ることもあり得るのです。

しかし、「定期・定額」で積み立てて購入すれば、高い時には少量を買い、安い時には多く買えるため、全体としてみたときに高値買いを防ぐことができます。 初心者は「定期・定量」の積み立てと混同しやすいので注意してください。

「定期・定量」の積み立てとは、定期的に一定量を購入することを指します。価格が安い時には購入額も少ないですが、高い時には購入額が増えてしまうのです。「定期・定額」に比べると、「定期・定量」は非常に効率の悪い方法ですので、購入する際には間違えないようにしましょう。

「定期・定額の純金積立」と、「定期・定量の純金積立」の差は、以下の図を見れば一目瞭然です。

ドルコスト平均法のイメージ図

もし「毎月1グラムずつ買おう」などと考えているならば、「毎月1万円ずつ買おう」と考えるようにしてください。

方法2.株と同じ感覚で売買できる金ETF

純金積立のデメリットである「手数料の高さ」を嫌う人は、金ETFがおすすめです。金ETFは証券取引所に上場しているので、個別株と同じ感覚で買うことができます。

また手数料が抑えられていることもメリットのひとつです。 自分でルールを作り「定期・定額」で買っていけば、純金積立よりもコストを押さえつつ、純金積立と同じ効果が得られます。

投資割合の目安はポートフォリオ全体の10%

実際にこれから金で資産運用をしようと考えている人は、投資資金を全て金に回すのではなく、色々な資産に分散投資することを心がけましょう。金の価値がゼロになることは考えられませんが、今後の上昇は未知数であり、2000年以降の上昇が一服して下落に転じる可能性も考えられます。

その場合、資金の100%を金に投じていると大きな損失を被ってしまうため、株や債券をはじめとする様々な資産に分散したほうが賢明です。

一般的に、金の投資配分の目安は10%程度といわれます。

金を10%組み込んだポートフォリオ

したがって、毎月1万円投資したいと思っている人であれば、金以外の複数の資産に分散投資できる投資信託の積み立てなどに年間11万円を回しておき、残る1万円を金ETFのスポット投資に回すといったプランが現実的でしょう。

まとめ

資産と書かれたブロックと家

本記事では、金投資の基礎知識や実際に投資を始める際に初心者におすすめの商品を解説しました。

2000年以降、金の上昇には目覚ましいものがあり、金の保有比率を10%以上に引き上げるべきとする意見も増えてきています。 魅力の高まっている金は、これから資産運用を始めたい人にとっても十分に投資対象になり得るでしょう。

しかし、今後の金価格については確実なことはわからないため、投資配分については十分検討してから決めることが大切です。